Interview

Vol.014

2006年の願いを
2026年に叶えた話

セキュリティ事業本部 第3開発部 開発8課

友岡 浩之

Hiroyuki Tomooka

2006年の願いを
2026年に叶えた話

セキュリティ事業本部 第3開発部 開発8課

人生で一度、特許を取得してみたい。そんな夢を何度か見たことがあります。編集の岡井です。さて、今回の主人公、友岡さんは、オプテックスの侵入検知センサーの開発第一人者。世界各国で登録された特許および意匠は70件超という、アイデアマンです。 そんな友岡さんをはじめ、屋外センサーのオプテックスが20年前から実現できていなかったのが、「カーテンナローセンサー」という製品ジャンルです。各社がこぞって製品を投入する中、オプテックスは開発を長い間見送ってきました。そして2026年6月、満を持して発売されたカーテンナローセンサー「TXI」。それを支える世界初の技術「Triple AND Logic」の生みの親であるエンジニアに、じっくりお話を伺いました。

Okai

Okai

今日はよろしくお願いします!友岡さんも例によって小さなころからモノづくりに興味があったとお聞きしました。

Tomooka

Tomooka

小学校の時には自分で毎週のようにプラモデルとか釣り用のルアーを作っていました。中学に入って技術の授業が面白くって、工業系の高校へ進んだのち理系の大学へ。とにかく機構設計としてのモノづくりが面白くて、将来は技術屋になるのかなと思っていました。働くことを意識し出したのは大学に進学するかのタイミング。当時、大手自動車メーカーの、それも研究所の求人が出ていて。車が大好きだったこともあって強い興味を持っていたことを覚えています。

Okai

Okai

車への憧れがありつつ、オプテックスを選ばれた理由はなんでしょう。

Tomooka

Tomooka

きっかけは自分が滋賀県出身であることです。大学の就職課の求人票に目が留まり応募しました。オプテックスに決めた理由は開発職として「モノづくり」ができること、そして車通勤OK。この2点だけで決めました。

Okai

Okai

採用プロセスというか、他企業と迷うことはなかったのでしょうか。

Tomooka

Tomooka

バブル期は就活生にとっても、すごく良い時代でした。オプテックスの会社見学の日に、何の予備情報もなく訪れたのですが、帰り際に呼び止めてもらって。「良かったらこの後、面接しないか?」と言われて、「いいですよー」なんて調子でした。その時は正直、オプテックスが作っている製品カテゴリ自体にはピンと来ていませんでした。

でも、その日の夜に電話がかかってきて「採用です」と。それで、希望条件を満たしていたこともあり入社を決めました。今じゃ絶対入社させてもらえない企業ですね。時代に感謝しかありません。

Okai

Okai

入社直後はどのようなお仕事を。

Tomooka

Tomooka

1991年に入社してすぐ、今と同じセキュリティセンサーの開発担当になりました。そこで、OJT担当の池田さんに任せていただいたのがFX-360という天井に設置する防犯センサーでした。このセンサーはまだ現役で、毎年数多く売れているんですよ。

Okai

Okai

初めての製品が、超ロングセラーに!世に出した際の感覚って覚えていらっしゃいますか。

Tomooka

Tomooka

正直に言うと、売れ行きには全然興味がなかったです。モノづくり、中でも設計ができていれば満足でした。ただFX-360の開発を通じて、オプテックスでエンジニアとしてやっていけるな。とは思いました。その後、一時的に水質測定関連の部署や、放射温度計、ビルディングオートメーション事業開拓の部署も経験し、営業のような仕事もしました。分かる人には通じるのですがそれらの部署経験も大きく後につながっています。

でも基本的にはずっとセキュリティ。それも遠赤外線を利用した、パッシブセンサーだけをやってきました。

Okai

Okai

ではここから、今年発売になった製品「TXI」についてお聞きします。そもそもカーテンナローセンサーとは、どういったものですか。

Tomooka

Tomooka

ヨーロッパ、特にイタリアで大きなマーケットがあるセンサーで、20年以上の歴史があります。ナローはエリアの幅が狭いという意味で、住宅の外壁に平行して警戒エリアを作ることができる屋外用の防犯センサーです。

窓や壁面に沿って、隙間なく検知エリアを作れるためカーテンと表現されている。

Okai

Okai

この機能は、どのような現場や顧客から求められてきたのでしょうか。

Tomooka

Tomooka

警備会社や住宅やマンションに住まわれているエンドユーザーからニーズがありました。その時代、オプテックスは「VX-40」という低所につける防犯センサーを既に発売していて、大ブレイクしていました。それはもう爆発的に。屋外用パッシブセンサーの世界マーケット自体をオプテックスが作った歴史的な製品です。

基本性能としての高い信頼性はもちろん、人を検知しながら小動物を検知しにくくする「ペットトレラント」の性能が群を抜いていました。上段と下段に二つの検知エリアを持っていて、上下のエリアに同時に触れるとアラーム。小動物の場合は上のエリアまで背が届きにくいため、誤発報を抑えることができました。

それに加えて、極めて簡単な設置方法でも信頼性が確保できること。そして設置いただく業者さんも、高い付加価値を提供でき利益を確保できること。この3拍子がそろった革新的な製品でした。


※編集部注:VX-40も友岡さんのお仕事。先輩社員と共に開発した特許技術「受動型赤外線式人体検出装置」は2008年度、近畿地方発明表彰で滋賀県支部長賞を受賞。特許期限が切れた2016年以降に、海外の競合メーカーが即技術採用するほど、業界的に魅力的な発明だった。

Okai

Okai

でもオプテックスは当時から20年に渡って、このジャンルのセンサーを発売しませんでした。

Tomooka

Tomooka

はい。当時すでに出回っていたセンサーは、小動物を誤検知してしまう、もしくは人が侵入していても反応しないような製品が多く、市場はあるけど満足はしていないという状況でした。

オプテックスには「VX」があったので、市場からの期待値も上がっていましたし、もちろん要求に応えるべく私以外のメンバーからも、長年さまざまな提案もありました。しかし、あと一歩「オプテックス品質」に届かなかった。

Okai

Okai

市場の最も大きな要求は、検知性能だったのですか。

Tomooka

Tomooka

検知性能は重要です。しかし機能が良くなっても、使い勝手や設置方法が難しくなると市場は使ってくれない。またイタリアは特にデザインに対する意識も高いので、住居の外観を損なわないようサイズを小さくしないといけなかったのです。
各要素をある程度満たす提案は行われてきましたが、全てを高いレベルでバランスさせることが叶わず製品発売には至りませんでした。

Okai

Okai

それらを丸ごと解決されたのが、世界初の技術『Triple AND Logic』です。

Tomooka

Tomooka

技術の詳細がなくても、アップグレードされたことが分かりやすいですよね。VXで発明した上下二つのエリアを上回る「トリプル」のエリアを形成するということですから。
このように『超』分かりやすいのはマーケティング上でも良いのですが、実際はそう簡単ではありません。部品を増やせば、その分だけ製品も大きく、部品点数も増え構成も複雑になってしまいます。そこで見た目のパーツ数はそのままで、3つのエリアを形成する技術を考えました。

独自の受光素子配置によって、3つの検知エリアを形成。高所に取り付けても小動物と人を高精度に見分ける。

Okai

Okai

『Triple AND Logic』のアイデアは、いつ、どのように生まれたんですか。

Tomooka

Tomooka

なんでやったかな~? 時期ははっきりとは覚えてないですが、DUALタイプの素子とQUADタイプの素子を組み合わせたら2つの素子でトリプルアンドができるんじゃね?という感じでした。

思い付いた時は「これしかない!これはカーテンセンサーにばっちり使えるアイデアだ!」と思ったのはよく覚えています。この瞬間にゴールの画ができ上がっていました。

Tomooka

Tomooka

私の場合、いろんなことを考えているときに、ふと思ったことを殴り書きしています。デザインであったり、構造のイメージであったり、あるいはエリアパターンなどラフな構想を絵に描いておきます。
こうやって引き出しにいろいろなアイデアを眠らせておくと、いざという時に、ストックの中から製品につながるものが出てきます。それを設計段階で具体的に引き出し、具現化を進めるという流れも多いですね。

TXIについては、一度アイデアが浮かんでからは、あまり苦しまなかったと思います。もちろん製品を作る上での課題はたくさんあるんですけど、基本原理的に「いける!」となったら、技術屋としてできない理由はありません。
ただ、私はコーディネーターとして参画していたので、現場のエンジニアの皆さんは無理難題を吹っかけられて苦労の連続だったと思います。

Okai

Okai

ということで現場のエンジニア、片岡さんに来ていただきました。

Tomooka

Tomooka

彼は電気設計の担当。今回はできるだけサイズを小さくしていきたかったので、当初の目標として今までの製品基板の2/3のサイズに収めるところをゴールに。しかも素子は2個に、回路は3個に増やしてとお願いしてスタートしました。

実際、かなり苦労して実現していただけました。ある程度要素を切り詰めたあとからも、ヨーロッパから追加機能の要望が来たりして。「どうやっても入らないね」とか、そんなことの連続でした。
でもそんな時こそ「大胆に、ゴッソリ、やり替えましょう」と発想を転換してもらって。

Kataoka

Kataoka

はい、何とかデッドスペースを見つけて追加でコネクタを入れ込んだり、基板の位置を微調整したり。何とかすべてを収めたのですが、心の中で「設置する時に、もしかしたら配線が噛み込みやすいかもなぁ。怪しいなぁ」という不安もありました。その後、不安は的中してヨーロッパのチームから「これはダメだね」とのコメントが入りました。

結果的に端子の向きを見直すことになったのですが、最終工程に差しかかるタイミングだったので大変でしたね。

TXIの初期スケッチを見ながら当時を振り返る。友岡さんは片岡さんのことを「詰め込みの実現者」と呼んでいました。

Tomooka

Tomooka

TXIは技術的にはオプテックスの屋外製品として、人感性能、エリアレイアウト、誤動作の排除、サイズ、設置簡便性をどう両立させるかが鍵でした。
一方、企画全体では、担当エリアの子会社メンバーとの意思疎通と信頼関係、そして企画メンバーと開発チームの一体感をどう築くか。この二つが成否を握ると考えていました。

Okai

Okai

TXIは世界中で販売されていきます。国外のメンバーに伝えたいことはありますか。

Tomooka

Tomooka

長らくご要望いただいていたセンサーを、ようやくリリースできました。バランスの良いものに仕上がっていると思っています。自信をもってオプテックス製品として広めていただければと思います!
またぜひともお客様からの参考になるフィードバックや、もっとこうしたら良くなるんじゃない?などの改善の声があれば届けていただきたいです。

イタリア、スペイン、イギリスの展示会の様子。ヨーロッパをはじめとしたさまざまな国々で発売され、好評を博している。

Okai

Okai

各国からのフィードバック。社会環境も変わって、かつてほど頻繁に海外の現場に行けないと聞いています。だからこそ、それはすごい助けになりますよね。

Tomooka

Tomooka

そうですね、実際にこんなところにこうやって付けていますよ。という現場の写真などは分かりやすくモチベーションアップになりますね。実際に街中でオプテックスの製品が設置されて動いているのを目にするとテンションが上がります。

他にも我々が想定している使い方を超えた使い道や設置がされていることも多々ありますのでそれらはエンジニアの餌になります。そんな声や画がぜひとも欲しい。百聞は一見にしかず、です。

Okai

Okai

さてアイデアマン友岡さんが、一番閃く瞬間っていつですか。

Tomooka

Tomooka

私はお風呂が多いですね。一生懸命、深夜まで考えても何にも出ない時でも、家に帰ってお風呂に入っていると、頭の中で混線していたものがいったん白紙になってイチから組み上がるような感じでしょうか。
そして自分で考えたことを自分で否定できるかどうかも重要だと思いますよ。皆さんもアイデアに困ったらぜひチャレンジしていただきたい!

あと、これも昔から言っていることですが技術屋は自分から『できない』って思わないようにしてほしい。技術屋ができないと言ってしまったら誰ができますかと。
自分ができないと言ったら、その瞬間に未来は閉ざされる。常にそう思ってきました。もちろん物理的に不可能なことはあるのですけど、心構えとして。

Okai

Okai

『できる』が出るまで考えるということですね。しかし単にモノづくりが好きだということと、製品として世に出すことって少し異なる領域な気もします。友岡さんの品質や性能に対する哲学はありますか。

Tomooka

Tomooka

哲学ではないですが、経験として言わせていただくと「ここよりは落としたらあかん」というボーダーは、常に自分の中にあります。
また量産段階の性能を見据えて設計に落とし込むということは、長い期間の中でもまだ十分に満足できていない点ですね。最初からどこまで設計に落とし込むか?については本当に難しい。

Okai

Okai

エンジニアとして、できるだけ妥協したくないということでしょうか。

Tomooka

Tomooka

妥協にも二種類あって、ここまで到達していたら絶対大丈夫。時間やお金があればもっと煮詰められたかもしれない。というのがひとつ。そして「なんとかなってくれ」みたいに心配な部分を悪い意味で見切っていく、やりきってないパターンがもうひとつ。

で、後者の方ってやっぱり後から痛い目を見るんですよ。

筐体の嵌合(かんごう)がほんの少し、こだわり切れていないことがあって。もちろん製品としては成り立っていて、防水性試験もクリアしていた。でも心の奥底で「なんか嫌やなぁ」と感じていて、でも時間やコストの兼ね合いもあって「まぁなんとかなるか。」みたいな妥協で市場に出した結果、浸水のクレームが起きてしまいました。そんなこともあり、失敗の連続ですね。

一方、高みを目指す妥協については今でも「もうちょっといじったら良くなるのになぁ……」と思うことがあります。今は自分で作業をする立場ではなく、最後は担当者に委ねています。それでも、「もっと強く言い切っておいたら良かったのかもしれない」と思い返すことはあります。

でもこれって、誰とでも認識を共にできるものでは無くて、それこそ0.05 mmを直すかどうかの領域です。

Tomooka

Tomooka

伝わるかどうかわからないですが一言でいうと、これによって製品に命が吹き込まれる感覚を大切にしているんです。特にオプテックスの製品はライフタイムが長い。それこそ入社時に作ったセンサーがまだ販売されているくらいに。なので私の中では、命を吹き込まれた製品が時間をかけて、自分自身をプロモートしていくという状況が理想です。

TXIに関しても創る側の、私たちの意図が伝わる命を吹き込まれた製品になったと思うので、期待しています。

Okai

Okai

製品自身がプロモートしていく。とてもいいですね。
ところでオプテックスの開発者だからこそ味わえた面白さってありますでしょうか。

Tomooka

Tomooka

面白さ、うーん……。逆説的になるんですが苦痛を感じたことがあまりないかも。アイデアを形にする楽しさが勝ち続けてきてる感じです。オプテックスの製品が一体何なのかも知らずに入ってきましたけれど、1991年からずっと、モノづくりは面白いです。

Okai

Okai

「面白い」の部分を、なんとか言語化していただくことはできますか。

Tomooka

Tomooka

うーん……形を想像する。図面を引いて、実体となって現れて、製品として仕上がっていく。楽しくてしょうがないですね。

今、オプテックスの若手の技術者を見ていても、興味をもってやってもらうと、ものすごく自発的にやってくれますから、それも面白いと言えるかも。ああ、やっぱり技術屋さんだなってすごく共感する。だから次世代に期待するというよりは、次世代の皆さんが活躍できるような材料をうまく提供してあげたいと思っています。

Okai

Okai

次世代のお話が出たので、この流れでもう少し。伝えておきたいことはありますか。

Tomooka

Tomooka

先輩や上司が「できなかった」と言っていても、それをそのまま自分の「できない」に置き換える必要はないと思います。まずは自分で取り組み、自分なりの結論を確かめる。たとえ実現できなくても、その経験は蓄積され、いつか新しいモノづくりやアイデアにつながります。

そして、さまざまな事象を気に留めることを怠らないようにするといいです。ちょっとした実験で、「あれ? 今の挙動変だな」という場面に遭遇すると思いますが、それを、無かったことにしないでほしい。

雨ざらしになっているTXIをチェック

Okai

Okai

最後に、次の企みについてちょっとだけ教えてくれませんか。

Tomooka

Tomooka

イノベーションにつながるような新しいセンサーのアイデアを構想中です。セキュリティ分野でのオプテックスの新しい扉になるかもしれません。
まだまだ詳しくは言えませんが、乞うご期待ということで!

年齢を重ねた今、友岡さんは改めて「ええ会社やな」と思うことが増えたそうです。自ら現場へ出て、人とつながることで、自分たちの仕事やビジネスの見え方も変わっていく。そんな現場主義の大切さを話してくださいました。 アイデアを描き留め、小さな違和感を見過ごさず、「できない」で未来を閉じない。技術や材料、仲間との連携がそろった2026年、20年来の宿題は「TXI」という答えになりました。問いを持ち続けた時間が、いつか新しいモノづくりにつながる。友岡さんのお話は、そのことを確かに証明するようでした。


企画・編集:岡井良文

 

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※本記事は2026年9月の取材内容で構成しています。