

Interview
Vol.002
SCMのプロフェッショナルに聞く
仕事とプライベートと生き方と
大谷 ひとみ
Hitomi Otani
BIOGRAPHY
- 1986年 0歳
- 誕生
- 1996年 10歳
- 百人一首で福井県、敦賀市のチャンピオンになる
- 1998年 12歳
- 交換留学でロシア訪問し、異文化を学ぶ。ギターとドラムもはじめる
- 2004年 18歳
- 大学入学と同時に滋賀で一人暮らしを開始。社会学を学ぶ
- 2009年 22歳
- オプテックス入社。生産統括配属
同期に百人一首で敗北する
- 2013年 27歳
- 結婚
在庫適正化プロジェクトに参画
- 2017年 31歳
- 育休取得。人生の痛かったこと第1位が脱臼から出産に
復職。ERPシステムの立ち上げプロジェクトに参画
- 2021年 35歳
- 2度目の育休を取得。出産は2回目も怖い
- 2022年 36歳
- 復職。現在に至る
SCMのプロフェッショナルに聞く
仕事とプライベートと生き方と
事業推進本部 事業推進部 SCM課 大谷 ひとみ
編集担当の岡井です。SCM(サプライチェーンマネジメント)は製品や部品の在庫を、販売や生産の状況に沿ってバランスする重要な仕事。特に昨今のような不安定な社会では、在庫や受注状況も大きく揺れ動きます。オプテックスの供給連鎖管理を支える傍ら、二度の出産を経験した大谷さん。キャリアも家庭も充実する中で見据える、今後の生き方についてお聞きしました。


Okai
現在のお仕事について簡単に教えてください。

Otani
私たちのチームは各仕入先からの製品調達とお客さまへの製品の出荷を担っています。その中で私の主な仕事は生産計画や製品デリバリーなどのスケジュール調整です。製品が用意できない、あるいは多すぎるといったロスを起こさないことが大切な仕事です。
今年の前半までは新型コロナウイルス感染症の影響で部品がひっ迫していましたが、いまは在庫がしっかり持てるようになるなど、変化の大きな時代なので増減産の立ち回りが難しいですね。

Okai
社会変化が直接影響するダイナミックな仕事なんですね。

Otani
事業部や工場とのやり取りも多く、ミスコミュニケーションが即ロスに繋がるので緊張感を持って業務にあたっています。例えば依頼側だけが生産をストップしたつもりになっていて、結果必要のない製品が納品されてしまった。なんていうことがあると何百万円という損失に直結しますし、後処理の負担も増えてしまいますから。
だから資料を作る、数字で伝える、フラグを立てる。といったことを徹底しています。オプテックスのSCMメンバーは、みんなそんな感じですけどね。
私たちの部門はお客様や営業、工場の要求にできるだけ答えたいという思いが強いです。「できない」という判断をする前に、利益とコストを天秤にかけてやるべきなら対応します。
コロナ禍で世界的に部品がひっ迫していた際に、役員からの状況説明で「オプテックスは他社に比べて製品を供給できている」と説明があり、その時はすごく自信になりました。

Okai
とはいえ様々な部門とのコミュニケーションです。
こちらを立てればあちらが立たずといったことはありませんでしたか。

Otani
ありました、ありました!入社してしばらくは、ご機嫌管理みたいなことをしていましたね。どのようにふるまえば怒られないかということばかり考えて。
そのような時、部内の50代のベテラン社員によく相談してたんです。
その時言ってもらった言葉が「誰に何を言われてもいいよ。最終的に会社のためになると判断したならやればいい」。

Okai
判断基準を引いていただけたということでしょうか。

Otani
そのとおりです。それからは自分が会社のため、お客様のためだって思えるなら実行しようと決めました。今も助けられている言葉なんですよ。

Okai
他に印象が強く残っている出来事はありますか。

Otani
2011年に東日本大震災がありました。東日本には多くの電子部品のメーカーさんがいらっしゃいましたが、大きな影響を受けられました。
当時私は生産統括本部に属していたのですが、オプテックスへの計画的な納品も厳しくなりましたので、いつどの製品の部品が切れるのかを毎日毎日シミュレートすることになったんです。
追いかける必要のある部品数は数百に及びますから、まさに緊急事態でした。

Okai
当時、まだ入社3年目です。

Otani
私以上に先輩方が大変そうでした。生産管理は陣頭指揮も執らなければなりませんし、購買はベンダーとのやり取りが大量にありましたから。その中で、比較的手が空いていたのが若手の私でした。
そこで、在庫や生産の予測が簡単にできるシミュレーションツールを作ることにしたんです。アクセスとエクセルのマクロを使って。
独学で勉強して、ガッと作りました。

Okai
未経験でツールを作る。簡単ではないように思えます。

Otani
39度を超える知恵熱が出ました笑
ふらふらになりながらも何とか食らいついて。「本当にできるの?」と聞かれても「できます」と突っぱねてましたね。最初は他の人に作ってもらうことも考えたのですが、仕様を伝えて打ち合わせをしてという時間もなくて。当時は一日も早く使えるツールが必要だったんです。
大きな山を乗り越えた後に「何も言わなくても、みんなで乗り越えようとしてくれた。それが心から嬉しかった」と当時の上司が言ってくださったのですが、私にとって自分の意志で取り組んだ仕事が認められた、初めての瞬間でした。
その後、アジア地域で大洪水が起こって、震災と同じような状況が生まれました。その時はこのシミュレーションツールがあったので、問題なく対応できました。

Okai
この経験はその後も生かされましたか?

Otani
2013年に取り組んだ、在庫適正化プロジェクトで役立ちましたね。プロジェクトの中でデータを一から見直して、販売と仕入れ、在庫のシミュレーションシートを作成しました。私はその中で全体の仕様構築とアクセスでデータを抽出するプログラムを担当しました。
正直、震災の時にグッと経験値が上がった実感がありました。もちろん大変ではありましたけど「まだいける。あの時もできたんだから!」って。

Okai
育休からの復帰もご経験されますが、スムーズに移行できましたか。

Otani
2022年5月に二度目の復帰を果たした時は大変でした。
先にもお話しした通り新型コロナウイルス感染症の影響で、あらゆる部品がひっ迫している時期でした。
翌週の部品を必死で追いかけて、なんとか生産につながるような状況で。でもそれだと時間が短すぎて新しい手が打てない。そこで「一回だけ頑張って、4週間先の生産計画と部品の納品予定を軸に見るようにしましょう!」と提案しました。
結果的に毎週1週間分を見る。という作業量は変わらないんですが、一度頑張って見るポイントを先送りできれば生産までに1か月くらいの猶予ができます。そうすると部品のベンダーさんへの要求も丁寧になりますし、私たちの心にも余裕ができるので三方良しですね。

Okai
具体的に1か月程度余裕がでてくるとどんな手が打てるんですか?

Otani
在庫余裕のある製品の生産を抑えて部品を温存するとか、ダウンコンパチやアッパーコンパチ(互換性のある部品を他の製品からあてがう)を提案できます。
こういった提案がうまくいって製品が供給できると、営業さんたちから「ありがとう!」と言ってもらえます。月並みですがそれが一番嬉しいです。
あ、でも今は自分より下の世代が育ってきてくれていて。その人たちが他の部門から褒められているのを見るのは、自分のことよりも嬉しいかもしれない笑
ご自宅にも伺った。2人のお子さんは普段なら保育園と小学校。この日は夏休みということで一緒に撮影に参加してくれた。

Okai
ちなみに家庭とのバランスはどのようにとられていますか?

Otani
大学時代に社会学を専攻していて「役割期待(特定の地位の人に対して、規範的に期待される行動)」について学んでいたんです。
当時のアルバイト先で、パートさんはパートさんらしく社員さんは社員さんらしく振舞ってしまう。といった事象をフィールドワークとして観察していました。
そういった考えが染み付いているからか、「母」「女性」「ワーママ」はこうあるべき。という一般的な役割期待には応えようとしてないと思います。

Okai
暗黙の了解や、風潮に流されない。

Otani
はい。私は仕事上できないことがあっても「女性だから」「子供がいるから」できないと思いたくない。お家のことに関しても「働いているから」できない、じゃない。
まぁ元々のハードルが低いので、完璧を求めてやってないのもありますけどね笑

Otani
とはいえ子供の体調不良など、どうしようもないこともあります。オプテックスには在宅勤務や私用外出の制度がありますし、部門のメンバーの理解もあります。
お陰で制度をバランスよく活用しながら、仕事に穴をあけずに対応することができているんです。
でもこれはDX部門の貢献が大きいと思いますね。コロナ禍の前からDX化が進んでいたことが、リモートワークにスムーズに対応できる大きな要因だったので。

Okai
ところで、大谷さんが影響を受けた方っていらっしゃいますか。

Otani
もちろん社内にもいっぱいいらっしゃるんですけど、今一番影響を受けているのは一回目の育休中に仲良くなった女性です。同じ時期に出産をして子育ての悩みや仕事について話し合う中で、考え方が非常に近いことが分かりました。
彼女はマーケティングのお仕事をされているのですが、私がこれから仕事でやりたいようなことを実現している方でした。交流を重ねるうちに、いつの間にか自分にとってのロールモデルのように感じるようになったんです。

Okai
大谷さんがこれからやりたいこと。興味があります。

Otani
ちょっと抽象的かもしれないですけど、女性ってなんとなく車の助手席に座っているイメージがないですか?
社会学でいうところの「ジェンダーバイアス」といって社会にあふれています。私としては何かを決める時に女性らしさや母親らしさより「自分らしさ」を優先したいなと常々思っていました。運転席に女性が座っても、助手席に男性が座ってもよくて、様々な生き方・働き方が尊重されてほしいなと思っていました。
私はその中にあって、ハンドルを握りたいタイプなんです。自分でやることを決めて、自分でやりたい。この変化の大きな時代の中で、仕事や家庭も従来のやり方でOKではなくて必要あらば柔軟にやり方を変えて解決していきたいなと考えていました。
先ほどの女性は、同じ時期に復職し、そんなことをすでに実行されている方だったのですごく勇気をもらっているんです。

Okai
最後に今後の展望について教えてください。

Otani
まだまだVUCA(ブーカ。不確実性が高く将来の予測が困難な状況であることを示す造語)な時代です。社会の変化が大きくって今も苦労を感じることもあります。その中にあって今、私ができる一番の貢献はデータを示すこと。そしてデータに基づいて動くこと。勘でも感情でもなく、データ。
データで示すとリスクも機会も、みんなが納得して判断できますから。
あと、オプテックスの企業理念である【I.F.C.S.】という考え方、私大好きなんです。個人があって、家族があって、会社があって、社会に貢献する。

Otani
欲張りすぎかもしれませんが、私はあらゆる面で人生を豊かにしたいです。いろんな希望を叶えたいです。仕事でも製品調達という業務を通じて、なりたい自分になりたい。プライベートでは久々にギターも弾きたいし、娘たちの髪をもっと上手に結えるようになりたい。
ワークライフバランスって言葉がありますけど、実は私はあまりピンと来ていなかったんですよ。
家にいたら家のことを多く考える、職場にいたら職場のことを多く考える、でもどっちの瞬間も双方のことが頭にあるんです。天秤というよりグラデーション。
そういうことに理解のある環境に身をおけているからこそ、シームレスに生きていける。
この環境の中でなりたい自分になって、会社にも社会にも還元していきたいなって思っています。
未経験で作ったシミュレーションツールがきっかけになり、今では一番得意といえるスキルが身に付いたとおっしゃいました。そして、そんな大得意なスキルに代わるシステムが導入されることになっても、新しい変化をポジティブに受け入れられているのが本当に印象的でした。ちなみにこれまでスーパースピードでやってきた大谷さんは、新ツールで生まれるゆとりも大切にしていきたいとのこと。その隙間から何が生まれてくるのか、とても楽しみです。
企画・編集:岡井良文
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※本記事は2023年10月時点の情報で構成しています。