新しいオプテックスのかたちへの挑戦
お客様視点のポリシーV.S.経験のバイアス
「お客様のことを想像して、企画・設計することこそが、モノづくりの一番の楽しさ」、これは創業当時から変わらないオプテックスのポリシーです。ですから、オプテックスは、開発者や営業が世界中の設置現場を訪問し、どのような人が、どんな状況で、どのように使われているかなど正しく認識し、本当のニーズを満たすことを探り出しながら、モノづくりをすすめてきました。
しかし、デザインプロジェクトが発足した2015年、モノづくりの現場に陰りがありました。私たち自身が現場で感じたり目で見た体験から仮説や創造が十分できていない、お客様視点から「経験というバイアス」によるモノづくりをしてしまっていたことに気づきました。
デザインプロジェクトの発足
一部の人たちが「これでいいのか」「このままではダメだ」という想いを抱きはじめたころ、現状を打破するためのアプローチとしてデザインプロジェクト発足の話が持ち上がりました。
2015年2月、デザインプロジェクト発足時のメンバーは、それぞれの役割を持った開発・マーケティング・広報から各1名の計3名(2019年時点では、活動が拡大し各部門から計10名で構成している)。トップダウンではなく、改革の意識を持つ社員たちによる草の根的にはじまったプロジェクトということもあり、高い士気がありました。
モノづくり全体を設計すること
ところが、議論すればするほど、取り組むべき事案の多さに気付くことに。
大塚:「モノづくり」の根幹は創業当時のように、お客様視点で考えるというところからはじまっていますが、結局のところ、デザインプロジェクトの活動は「誰のために」「どう価値をつくるのか」「その価値をどう伝えるのか」が問われてきます。すると取り組みを進めていくにつれ「コミュニケーション」や「ヒトづくり」の大切さが浮き彫りになり、結果、壮大な活動となり、途方にくれていました。
大塚:とはいえ、デザインプロジェクトは前を向いて進めていくプロジェクトです。まずは、取り組んでいくための優先順位を模索。世に出ていくものすべてが、オプテックスらしいと言ってもらえるものにするには、モノづくり、さらにそのプロセスやコミュニケーションに至るまで、そこに込めた想いや誠意、フィロソフィーが大切です。その共通の軸となる言葉=デザインのスタンダードを持つ必要性があると考えました。外部のデザインファームからもアドバイスをもらいながら、「デザインフィロソフィー」を策定しました。
デザインフィロソフィー
オプテックスらしく、信頼される製品をぶれることなく生みだしていくために、モノづくりへの想いを共通の軸となる言葉で表現したものが『オプテックスのかたち』です。このフィロソフィーは過去から受け継がれている考え方でもあり、過去を大切にしながら未来に飛躍しようという想いが込められています。
5つの指針「使うひとになりきる」「0.1mmの心配り」「ムダがない」「粋なはからい」「変わるけど、変わらない」のもと、「オプテックスのかたち」を具現化する活動をスタートさせました。
社内を変えていくための活動
島田:お客様にとっての価値を発想する施策として、アドバンスデザインに着目した『未来のセキュリティセンサーを考える』というテーマで約20名の開発者を中心としたワークショップです。
5年後、10年後はモノのかたちも市場環境も変わっているはず。そうしたシーンを想像して『お客様にとっての価値』『社会の価値』『デザインの嗜好』を考えながら、検知センサーはどうあるべきかを思案してもらいました。製品スペックのアプローチは意味がありません。このワークショップでは、お客様視点の思考へ転換する良いきっかけになったと思っています。
また、未来のセキュリティセンサーのプロトタイピングまで仕上げ、社内でも共有を行いました。
林:ワークショップでは、ユーザビリティテストも行いました。製品を初めて使う人と使い慣れている人の2つのパターンに分け、現在販売されている製品とモデルチェンジした発売前の新製品を使い比べてもらいます。ユーザビリティテストをやってみると、気づいていなかった課題が見えてきました。天井と壁の隅に設置する際の設置のしにくさ、何度も脚立に上って部品を取りに行ったりする手間など。
その後、デザインプロジェクトによる社内勉強会や外部企業のデザイン活動を学ぶセミナーなどを、継続的に開催し、少しずつではありますが、活動の理解が広がりつつあります。現在では、新製品開発ユーザビリティテストを行うことが定着しています。
実務で生かすための活動
勉強会やワークショップを実施したとしても、それをいかに実務と結びつけるかがポイントです。その1つとして、取り入れたのが製品企画時に作成する「バリューコミュニケーションシート」です。オプテックスでは、以前から企画者が記入する「新製品プランシート」というものがありました。プランシートには「どういうお客様」が、「どういう使われ方」をして、「どういう要求」があるかを書いてほしかったのですが、いつの間にかスペックの記載が大半で、製品企画会議でもスペックに偏った視点での議論になっていました。
林:そこで私たちは、現在の状況、お客様の生の声、現場における制約、お客様の行動を把握し、そこから、どのような課題解決をすれば、お客様に価値を提供できるかというのが見える「バリューコミュニケーションシート」です。このシートは、いかにお客様に向き合えるかがポイントです。今までとは異なる思考で進める必要がありますが、スペックではなく、新しい価値づくりに焦点をあてた製品企画ができるようになってきました。
ユーザビリティ向上はお客様視点の気配り
林:お客様視点は現場で発揮されてこそ意義があります。たとえば、モノだけを見て設置方向や傾きがわかるようにするための目印(刻印、水準器)、ネジをゆるめても落ちない抜け止め、お客様が施工や操作の際迷わないよう、触れる部分を青色に統一するなど、「有効性」、「効率性」、「満足性」というユーザビリティの向上を具現化しました。
WOW!! をお客様に届ける
デザインプロジェクトが発足し、この4年間で約20の製品が発売されました。これら製品に携わった人たちは、オプテックスデザインの考え方の一端に触れ、それぞれ目線が変わってきました。
大塚:オプテックス社員が「使う人を考えたモノづくり」への熱い想いを宿し、お客様に納得の超えた満足、WOW!と感じてもらえる製品やサービスを次々と創造していく、それがデザインプロジェクトの目指すところです。