異分野の知のコラボレーションで生まれた衛生管理システム

オプテックスのコア技術の1つの光計測技術。異業種であるバイオと発光技術を保有するキッコーマンバイオケミファ社との知の融合により、衛生状態モニタリングシステム「ルミテスターSmart」は生まれました。
共同開発プロジェクトメンバーで、お客様の課題に徹底的に向き合い、アイデアを形にした当システムは、世界の国々をもっと清潔に、安全にしようという想いで開発されました。

衛生管理を身近にする衛生状態モニタリングシステム「ルミテスターSmart」

衛生管理とは、食中毒や感染症などで健康被害を出さないよう現場を清潔な状態に保つために管理することです。食中毒や感染症などは、手指や器具、設備などに付着した汚れを介して起こる可能性があります。したがって、衛生管理は非常に重要です。
食品工場、医療現場、ホテル、飲食店などの現場では、日々丁寧な洗浄、清掃が実施され、衛生管理の指導が行われています。しかし、きれいにしていても目に見えない汚れまでは認識できていないのが現状です。
そこで私たちは、目視ではわからない汚れを測定するとともに、洗浄の合否判定が約10秒でわかる衛生状態モニタリングシステムを開発しました。

衛生状態モニタリングシステム「ルミテスターSmart」

こだわったのは、お客様に寄り添うこと

“モノづくりは現場から”という考え方が根付いているオプテックスでは、B to BだけでなくB to B to Cのお客様にも目を向け、課題を探索していきます。
今回であれば、キッコーマンバイオケミファ社であり、その先の工場、医療、ホテルや飲食店などの管理者や実際に機器を使用する人が私たちのお客様です。

●エンドユーザーと向き合う

製品開発のために向かった先は、都内の小さな洋食屋さん。
調理から料理の提供まで、どのような行動をしているかを観察、また、衛生管理の対策と課題についてオーナーシェフへヒアリングを実施しました。
これ以外にも、衛生管理が必要な現場やそこにかかわる登場人物の整理・分析をおこないました。

(課題)
・念入りに洗浄をしているが、本当にきれいになったかを確認・判断するすべがない
・検査=難しいイメージ。機器測定の操作も複雑なため、初心者でも、簡単に間違いなく検査したい
・菌検査は時間やコストがかかってしまう
・継続して実施できるモチベーションがほしい
・管理者が、現状を把握し、すぐに指導や対応ができるようにしたい

(アプローチ)
・初心者でも簡単に使用できるシンプルで直感的なUI(ユーザーインターフェース)とアプリによる結果の可視化ができる
・見えない汚れの測定だけでなく、合否判定も表示されるため、見落としていた潜在要因を見つけ、日ごろからの衛生意識を高めることができる
・測定者、測定場所、測定結果の情報はクラウドに蓄積され、管理者は遠隔で複数の場所の現状把握できる。これにより、迅速な対応や指導でよい衛生状態を維持できる
など

●システムサプライヤーのキッコーマンバイオケミファ社と向き合う

改めてオプテックスは、ビジネスパートナーであるキッコーマンバイオケミファ社の成し遂げたいビジョンに迫りました。
“システムを通して、お客様の検査結果が蓄積・共有されることで、お客様の衛生管理レベルのさらなる向上に役立つこと。“

(課題)
・多くの現場で、その場で測定しただけで、データの有効活用がされていない
・ノートにペンでの記録が多く、過去のデータをまとめたり、確認することが大変
・担当者だけがデータを把握し、社内で共有されていない

(アプローチ)
・初心者でも使いやすく、意識しなくても自然にデータが蓄積されるアプリの開発
・測定データの自動グラフ化や自動解析などデータを簡単に見える化
・システムをクラウド化し、お客様はどこからでも自社のデータが確認可能
など

キッコーマンバイオケミファ社とのワークショップ

お客様に必要とされる新しい体験を生み出す

こうして開発された衛生状態モニタリングシステム「ルミテスターSmart」は、共同開発プロジェクトとして、業界の違うメンバーのそれぞれの知見の融合と化学反応から生み出されました。

立岡:商品やサービスがあふれた現在、商品だけではお客様を引きつけることが難しくなっています。単なる機能的な価値だけでなく、その利用を通じて得られる「満足感」や「喜び」などの顧客の感情に着目し、顧客体験(UX)を重視したシステムです。一つの分野のメンバーだけで議論しても顧客体験のアイデアはなかなか形にすることはできなかったと思いますが、いろいろなバックボーンを持つ人たちと議論することで、知識以上のアイデアが考えられ、UX向上を実現しました。

志賀氏:意識せず測定データがアプリに蓄積し、だれでも簡単に衛生状態を見える化・管理できるシステムを構築したことが、今回の開発において新規性がある部分です。私たちはさらに、システムをクラウド化してお客様に活用していただくことへもチャレンジしました。これは、衛生管理の現場では、ノートに計測結果を書き留めてデータを蓄積されているというところに由来する不自由さから生まれたアイデアです。当初は、クラウドの運用等の経験がなく、システムのクラウド化に対するハードルは非常に高いものだと考えていました。しかし、オプテックスでは豊富なクラウド運用経験があることから、安心して導入を決めることができました。システムをクラウド化したため、従来よりもお客様の幅が広がったと実感しています。
関係メンバーが良いものを世の中に提供しようという想い、パートナーとしての信頼により生まれたこのシステムが、今後「衛生管理のシンボルマーク」として世界に広がってほしいと願っています。

(左)キッコーマンバイオケミファ株式会社 企画部 志賀一樹氏
(右)オプテックス株式会社 NSS事業部 開発部 立岡功稔

エンジニアの視点

立岡:お客様の要望通りに作るのではなく、お客様を見つめて、真のお困りごとを見つけ、自ら考え設計すること、そしてソリューションを提供できる製品に仕上げることがエンジニアの楽しみでもあり喜びでもあります。
この開発では、当社のコアテクノロジーである光技術を軸に、通信技術、ソフト開発、UXなど新しいアプローチに加え開発スピードにおいてもハードルはありました。
また、2018年にはHACCPに沿った衛生管理が制度化され、食品など事業者の衛生管理の必要性はさらに高まっているという市場の流れ、さらに、変化のスピードが速いIoTやクラウドといった技術の流れ、これらの流れを捉えてタイミング良く製品を世の中に送り出すには、開発スピードを向上し、開発期間短縮と新製品投入サイクルを早めることが重要です。
今回は、衛生管理の在り方を一変させたいという強い想いが、私をはじめ関係者を奮い立たせ、乗り越えることができたのだと思います。

世の中の求めるものの一歩先を、世の中に役に立つソリューションを、今後も開発していきたいと思っています。