センサーとエネルギーハーベスティング技術の融合が生んだスイッチ

運動、振動、光、温度差などのわずかな変化から発生する微小なエネルギーを収穫(ハーベスト)し電力に変換するエネルギーハーベスティング技術。エネルギーをセーブするだけでなく、センサーの応用範囲を拡大する潜在力を秘めています。なぜなら、さまざまな目的のために幅広く利用される各種センサーとエネルギーハーベスティング技術は非常に親和性が高いからです。

着目したのは、電力供給のための配線や電池交換の軽減

私たちを取り巻く環境はますます便利になり、高性能の機器があらゆる場所に設置されています。反面、数多くの機器を設置するには、配線工事の煩わしさや設置後の電池交換といった保守・メンテナンスがつきものです。オプテックスは、無線センサーの自立電源駆動を実現するためのキーテクノロジーとしてエネルギーハーベスティングに着目しました。これにより、省施工性(配線工事不要)と省メンテナンス性(電池交換不要)を実現可能にするとともに、環境配慮、省エネルギー、サステナブル社会に効果を発揮すると考えています。

押す力を利用したスイッチの開発

小さなエネルギーを活用することによって成り立つアプリケーション(用途)は何か、たどり着いたのが「押す力」を利用したスイッチです。

自動ドアは、センサーによって自動で開閉するタイプと、通行する人の操作(タッチ)によって開閉するタイプがありますが、どちらもドアのモーターを動かすための開閉信号を伝えるために電力が必要です。
自動ドアのセンサーやタッチスイッチはオプテックスの創業時より多くの経験を積み重ねてきた分野です。オプテックスではエネルギーハーベスティング技術を活用し、自動ドアの開閉スイッチの「電源レス」を実現しました。

タッチスイッチ

電池交換の多大な労力を軽減

配線工事不要、電池交換不要を実現した自動ドア開閉用タッチスイッチは、2017年に製品化し、まずはアメリカに向けてリリースをしました。導入例として挙げられる病院は、防犯・防火目的のため、各所に間仕切りが設けられており、間仕切りにはタッチスイッチで開くスイングドアが設置されています。そのタッチスイッチがオプテックスの製品です。

大型病院の場合、タッチスイッチは数百か所設置されています。数が多いためにスイッチへの壁内配線工事や不定期に生じる電池交換作業に大きな手間がかかります。電池式スイッチの場合だと、ほぼ毎日、どこかのスイッチの電池を交換しなければなりません。また、設置されたドアが非常災害時でも稼働できるよう、日々の点検・修理は欠かすことができないのです。

島田:オプテックスのスイッチが採用された理由は、そうした手間を軽減できる点。通行者の押す動作で電力を確保できますから、配線工事や電池交換も不要です。まだまだ手動の間仕切りが多く利用されていますが、導入やメンテナンスの課題を私たちの技術やアイデアで解決することで、必要な場所での普及が進んできています。また、アメリカで1990年に制定されたADA(米国障害者法)という法律があり、当社のスイッチはこの基準に準拠した製品です。大きく重いドアや回転式の自動ドアは、障害者や高齢者にとってドアの開閉や通り抜けの際に大きな障壁となっています。ドア横などに当社の開閉用のスイッチを設置し、全ての人が建物にアクセスしやすいよう工夫が施されています。

エントランス事業本部 開発部
開発1課 課長 島田博史

使用される現場を考え抜くオプテックスイズム

センサーが利用されるシーン、たとえば自動ドアであれば、「通行者が頻繁に出入りする環境」や「屋外環境」を想定すると、耐久性や防水性を備えなければなりません。

友岡:エナジーハーベスティング技術の課題は発電効率と耐久性です。僅かなエネルギーから発電した電力を効率よく活用するために、センサー開発で培ってきた超低消費電力を実現する電子回路設計やソフトウェア制御技術が活かされています。また、さまざまな環境下で長期間にわたって性能を維持しなければならないため、構造上の多くの工夫により高い耐久性を実現しています。さらに、屋外でも安心して使って頂けるよう機械的な動作と防水性を両立させるために、屋外用センサーの豊富なノウハウを注ぎ込んで高度な防水性能を実現しています。

セキュリティ事業本部 プロジェクトマネージャー 友岡 浩之
セキュリティ事業本部
プロジェクトマネージャー 友岡 浩之

オフィスビルや商業ビルのエネルギーマネジメントシステムへ

海外では、オフィスビルや商業ビルなどでは、省エネルギー性能を格付けする評価の義務化や省エネ規制が強化されており、各種センサーを照明や空調の制御や部屋の温度や湿度の管理に利用し、省エネを促進しています。また、日本国内においても、ビルの省エネ化に対して国交省や環境省が推進しており、設備導入に伴う改修の補助金制度が制定されました。これらの施設では、膨大な数のセンサーとその配線(LAN、電源)の確保が課題となっています。

オプテックスでは、配線不要・電池交換不要による、自由度の高いフリーレイアウト設置が可能なワイヤレス・エナジーハーベストスイッチを開発しました。オフィスの照明やブラインドの制御、会議室のスクリーンのコントロールなどに利用できます。また、ソーラーと一次電池のハイブリッド電源を採用したワイヤレス在室検知センサーは、人の存在を検知し、照明を点灯させたり、会議室の稼働状況をモニタリングすることに利用されています。

オプテックスでは、EnOceanという無線通信規格モジュールを採用して開発しています。

ワイヤレス・エナジーハーベストスイッチ
ワイヤレス・エナジーハーベストスイッチ

新しい技術との出会いと行動がセンサーの可能性を広げる

オプテックスは保有のセンシング技術を磨くだけではなく、新しい技術の動向や特徴を探求し続けています。これからも、現場の真の課題は何か、お客様が何を実現したいのか、それに見合う技術を取り入れ、新しい価値や体験を生み出していきたいと考えています。

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